ビタミン B12 は、体の基本的な機能を支える水溶性ビタミンです。赤血球を作り出し、神経系を守り、DNA の合成を助けるなど、生命維持に不可欠な役割を担っています。(※)
この記事を読むことで、以下の知識を得ることができます
健康への影響:
- 赤血球の生成: 酸素を全身に運ぶ健康な赤血球を作る
- 神経の保護: 神経細胞を覆う髄鞘を維持し、神経伝達をスムーズに保つ
- DNA 合成: 細胞の成長と分裂に必要な DNA を作り出す
- 脳機能の維持: 記憶力や集中力を支え、発達障害との関連も注目されている
不足のリスク:
- 悪性貧血: 大きすぎる赤血球ができて酸素運搬能力が低下
- 神経障害: 手足のしびれ、バランス感覚の喪失、記憶力の低下
- 発達への影響: 特に子供の脳の発達に重要
効果的な摂取:
- 動物性食品が主な供給源: 貝類、レバー、魚、卵など
- ビーガンの方の注意点: サプリメント活用の重要性
- 吸収のメカニズム: 胃と腸の健康が鍵
本記事では、ビタミン B12 の基本的な仕組みから、健康への具体的な効果、効率的な摂取方法まで、科学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。
ビタミン B12 とは何か
ビタミン B12は、コバラミンとも呼ばれる水溶性ビタミンで、その構造の中心にコバルトというミネラルを含んでいます。このコバルトに由来して「コバラミン」という名前がつけられました。(※)
歴史的背景
古代エジプト時代から、レバーは薬として利用されていました。人々はレバーを食べることで貧血を改善し、体力を回復させていたとされています。現代では、レバーに豊富に含まれるビタミン B12 がその効果の鍵であることがわかっています。
ビタミン B12 の特徴
ビタミン B12 には、他のビタミンとは異なる興味深い特徴があります
- 微生物が作り出す: ビタミン B12 は、動物の腸内に生息する微生物によって合成されます。植物性食品にはほとんど含まれていません。
- 体内での貯蔵: 肝臓に約 3mg 貯蔵され、これは 2〜4 年分に相当します。(※)
- 葉酸との協働: ビタミン B12 は葉酸と共に働き、赤血球の生成や DNA 合成に重要な役割を果たします。(※)
graph TD A[食事からのビタミンB12摂取] --> B[胃での消化] B --> C[内因子と結合] C --> D[小腸での吸収] D --> E[血液中へ輸送] E --> F{体内での利用} F --> G[赤血球の生成] F --> H[神経細胞の保護] F --> I[DNA合成] F --> J[アミノ酸代謝]ビタミン B12 の主な役割
赤血球の生成
ビタミン B12 は葉酸とともに、赤血球の生成をサポートしています。(※)
赤血球は腎臓から分泌されるエリスロポエチンというホルモンの働きによって、骨髄にある赤血球系幹細胞から分化します。前赤芽球へと分化した後、ビタミン B12 と葉酸が関与し、核が除去され中央がくぼんだ形の成熟した赤血球が作られます。
不足すると何が起こるか
もしビタミン B12 が不足すると、巨赤芽球性貧血を引き起こします。(※) これは以下のような問題を引き起こします
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 大きすぎる赤血球 | 正常に機能しない巨大な赤血球ができる |
| 酸素運搬能力の低下 | 全身に十分な酸素を届けられない |
| 疲労感 | エネルギー不足による極度の疲れ |
| 息切れ | 少しの運動でも息が上がる |
| めまい | 脳への酸素供給不足による |
神経の保護
ビタミン B12 は神経のビタミンとも呼ばれ、神経細胞の保護や修復に重要な役割を果たします。(※)
髄鞘の維持
神経細胞は、電線のように髄鞘という絶縁体で覆われています。この髄鞘がないと、神経の信号がスムーズに伝わりません。ビタミン B12 は、この髄鞘の合成と維持に欠かせない栄養素です。(※)
| 神経への影響 | ビタミン B12 不足で起こること |
|---|---|
| 感覚神経 | 手足のしびれ、痛み |
| 運動神経 | 筋力低下、歩行困難 |
| 脳機能 | 記憶力低下、集中力の欠如 |
| 精神面 | うつ症状、認知機能の低下 |
例えば、手足のしびれなどの症状は、ビタミン B12 が不足することで神経の信号伝達が正常に機能しなくなることが原因と考えられています。(※)
発達障害との関連
ビタミン B12 は、ADHD や発達障害などとの関わりが注目されています。(※) 特に子供の脳の発達に重要な役割を果たすとされています。
研究によると、ADHD(注意欠如・多動症) の子供は、健康な子供と比べてビタミン B12 の血中濃度が有意に低いことが示されています。(※) これは、ビタミン B12 が脳の発達や神経伝達物質の合成に関与しているためと考えられています。
DNA 合成とアミノ酸代謝
ビタミン B12 は、DNA 合成やアミノ酸の代謝にも関与しています。(※)
特に高タンパクな食事を摂る人にとって、ビタミン B12 はタンパク質の適切な代謝を助けるために不可欠な栄養素です。DNA の合成は細胞分裂に必要であり、アミノ酸の代謝はタンパク質から エネルギーを取り出すプロセスで重要です。(※)
graph TD A[ビタミンB12] --> B[メチオニン合成酵素の補酵素] B --> C[ホモシステインからメチオニンへ変換] C --> D[S-アデノシルメチオニンの生成] D --> E{メチル基の供与} E --> F[DNA合成] E --> G[タンパク質合成] E --> H[神経伝達物質合成]ビタミン B12 を多く含む食品
ビタミン B12 は主に動物性食品に含まれています。以下の食品が特に豊富な供給源となります。
主な食品源
| 食品カテゴリー | 具体例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 貝類 | しじみ、赤貝、あさり | 高濃度のビタミン B12 を含む |
| レバー | 牛レバー、鶏レバー | ビタミン B12 の宝庫 |
| 魚類 | 煮干し、いわし、サンマ | 小魚に豊富に含まれる |
| 魚卵 | いくら、たらこ | ビタミン B12 に加え良質なタンパク質も含む |
| 卵・乳製品 | 卵、牛乳、チーズ | 日常的に摂取しやすい |
植物性食品の注意点
一方で、植物性食品にはほとんど含まれていません。乾燥のりやテンペ、クロレラやスピルリナなどには少量含まれますが、これらに含まれるビタミン B12 は非活性型のため、体内で十分に利用されず注意が必要です。(※)
最近の研究では、一部の海藻 (特に紫のり) には活性型のビタミン B12 が含まれることが示されていますが、含有量にばらつきがあるため、これらを主な供給源とすることは推奨されていません。(※)
ビーガンの方への重要なアドバイス
完全菜食主義であるビーガンの方は、動物性食品を摂取しないため、ビタミン B12 が不足しがちです。
ビーガンの子供における深刻な影響
ある研究では、ビーガン食を 4 年以上続けた子供にビタミン B12 不足による深刻な健康問題が報告されています。(※) 母親がビーガンである場合、母乳を通じて乳児もビタミン B12 不足に陥る危険性があり、以下のような症状が現れることがあります。
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 精神運動発達の遅れ | 正常な発達マイルストーンに到達できない |
| 筋力低下 | 筋肉の萎縮や反射の消失 |
| 無気力・嗜眠 | 極度の眠気や活動性の低下 |
| 脳萎縮 | MRI 検査で脳の萎縮が確認される |
| けいれん | 神経系の異常による |
研究によると、ビーガン母親の母乳で育てられた乳児でビタミン B12 欠乏症が発症した場合、たとえビタミン B12 の補給により血液検査の値が正常化しても、神経学的な障害が残る可能性が高いことが示されています。(※)
ビーガンの方が健康を維持するには
したがって、ビーガンの方が健康を維持するためには、活性型のビタミン B12 が含まれたサプリメントを活用することが極めて重要です。(※) 特に妊娠中および授乳中の女性は、胎児や乳児への影響を防ぐため、必ずサプリメントを摂取すべきです。
まとめ
ビタミン B12 は、赤血球の生成や神経の健康を維持するために欠かせない栄養素です。以下のポイントを押さえておきましょう
主な役割:
- 赤血球の生成を葉酸とともにサポート
- 神経細胞を覆う髄鞘の維持
- DNA 合成とアミノ酸代謝への関与
- 子供の脳の発達と ADHD・発達障害との関連
食品からの摂取:
- 貝類、レバー、魚、魚卵などの動物性食品に豊富
- 植物性食品には活性型がほとんど含まれない
- 海藻類の非活性型ビタミン B12 には注意が必要
ビーガンの方へ:
- サプリメントや強化食品の活用が必須
- 特に妊娠中・授乳中の女性は欠乏を防ぐことが重要
- 子供の発達への影響を考慮した適切な補給
動物性食品やサプリメントをうまく活用し、健康維持のために適切なビタミン B12 の摂取を心がけましょう。ビタミン B12 不足は早期発見・早期治療が重要です。気になる症状がある場合は、医療機関を受診し、血液検査でビタミン B12 の状態を確認することをお勧めします。